諏訪中央病院(長野)研修レポート

臨床研修医 小山 泰諏訪中央病院での研修について

地域医療研修2012年6月~8月

諏訪中央病院は諏訪湖付近の茅野市の小高い丘の上に立つ中規模病院で、急性期を中心に回復期リハや療養にも対応する病院です。立地周辺の印象は穏やかで夏は避暑地として都会からの多くの観光客でにぎわいます。町の雰囲気とはうってかわって病院内は活発な医療活動や勉強会が行なわれ、研修医も主治医として重い責任を持ちながら一生懸命働いていました。ここで6~8月の3カ月間を地域医療プログラムで研修する機会を与えられました。以下に印象に残ったことなどを記したいと思います。

昼カンファ

月~金曜日の11時45分より昼カンファが行なわれ、ほとんどの研修医はこの時間を空けてカンファに参加します。講師を務める医師は4年目以上からベテランまで多彩です。始めに臨床で役立つ簡単な講義が行なわれます。責任者の先生に伺ったところ、良い耳学問を研修医達に聞かせたいということで、実際に題材はショックの鑑別などから勉強のやり方など(補強して勉強すれば)すぐに役に立つ臨床知識が得られるものでした。その後、近日中に救急から入院になった患者さんを題材としたケースカンファが行なわれます。これがカンファの本題で、講師の先生方は、カンファの時点で症例については全く情報を得ておらず、救急で担当した研修医からの症例呈示のみから鑑別を行ないます。約1時間かけて診断に至るまで討論が行なわれ、症例を通して上級医師がどのようなプロセスで診断に至るかを学ぶことができます。私自身も何例か症例呈示させてもらいましたが、病歴で聞けていなかったことや鑑別で何を挙げるか、必要な検査で何が足りなかったかなどを知ることができ、力不足を感じると同時に診断学のおもしろさを感じることができました。また、大事なことが繰り返されるのも特徴で、研修医たちも自然に臨床的なセンスを養うことができます。2年目の研修医達はフルに参加していれば、すでに300症例以上経験している訳で、実際鑑別診断もすらすらと挙げており、わずか1年間でこれほど差がつくものかと痛感しました。

勉強会

院内では勉強会が盛んです。主に感染症(や膠原病など)を中心に勉強会が行なわれます。毎月1回感染症講義があり、3・4年目の医師やコメディカルの人達が講師となり検査や臓器別の感染症についてスライド講義が行なわれます。講義室は椅子が足りなくなるほど盛況で、医師だけでなくコメディカルの人達の出席が多いのも印象的でした。この点からも病院全体としての感染症に対する意識の高さが伺われました。また、外部より感染症の専門家を招いた症例検討会も盛んに行なわれており、難しい症例などに行き詰まっても適切な対応ができるようなシステムになっていました。病院全体がこのような雰囲気でしたので感染症診療については得ることが多かったです。私自身は内科研修を全て終えた段階で実習に望んだのですが、感染症については系統的な勉強会など受けることもなくほぼ独学の状態で、グラム染色すらしたことがなかったのですが、そんなド素人に対しても染色の仕方を一から教えてもらい、感染症の基礎を学ばせてもらいました。実際、主治医を務めた患者さんも感染症関連の方が多く、実症例を通して感染症については多くの経験を積むことができました。その他、膠原病や地域医療に関する勉強会も活発に行なわれており、病院全体として勉強する雰囲気が漂っていました。

屋根瓦式の教育

諏訪中央病院では上級医から教えてもらうことがとても多いです。回診中や救急外来中など教えられない日は全くありません。3カ月で教わったことはそれまでの14カ月の研修で教わったことを軽く超えてしまいました。上の者が下の者を教えるという屋根瓦式の教育がしっかりと根付いています。研修カリキュラムも良くできていて、金曜日の朝に1・2年生だけのカンファがあり、そこで2年目医師が1年目に救急外来で役に立つ症候学を教えなければなりません。私も2年目である立場から講義しなくてはならず、スライドを作ってのぞみました。救急外来の研修も乏しく、お世辞にもよい講義ではなかったのですが、経験して感じたことは後輩医師に教えなければならないため、「真剣に医療業務に従事しなければ講義に生かせない」「講義のためにその症候についてしっかり勉強しなければならない」などでした。人に教えることは自分も学ぶことと言われますが、確かに一理あると感じられました。

最後に

研修では主治医という立場に立たせていただき、入院から退院まで患者さんに対して何を行なえば良いかを系統的に学ぶことができました。この点はチーム医療では断片的にしか学べない部分であり得ることが多かったです。もちろん責任は重いのですが、上級医が研修医をサポートする体制がしっかりとできており、研修医として着実に力をつけていくことができました。このような上級医の研修医への対応を通して、教える立場として何が要求されるか、どう配慮すべきかを感じるor学べた点は大きな収穫でした。時が経てば誰でも上級医になる訳で、研修医達に教えていく立場に立った時に少しでも、彼らに近づければと思いました。また、レベルの高い研修であり、それまでの研修との差分を実感できた点も貴重で、その中には自分の努力で補える部分もあり、日々の学習でより一層の努力が必要であることも痛感させられました。今後もここで得た質の高い良い刺激を維持しつつ医療活動に生かしていきたいと感じました。短い間でしたが本当に貴重で有意義な研修ができた3カ月でした。

臨床研修医 井口 美穂患者さんや医療に対する熱い気持ちを得た研修

地域医療研修2011年2月~4月

がんばらない

私が、諏訪中央病院を初めて訪ねたのは1月の終わり、雪が道路に残る冬晴れの日でした。
三つの方向を山に囲まれたなだらかな坂をのぼっていくとそこに諏訪中央病院があります。
病院のエントランスには暖かな色彩の絨毯や壁紙。さりげなく飾られた『がんばらない』の文字…。のどかなでゆったりとした雰囲気が漂っている病院でした。

がんばる

病院ののどかな雰囲気とは裏腹に、日々の診療業務は大変忙しく戦闘態勢の毎日でした。週2回は朝6時30分から研修医の勉強会があり、7時から患者さんの回診。その後は入院した患者さんの把握とオーダーを行い、チームリーダーの先生に入院した患者さんのプレゼンテーションを行ないます。11時45分からは毎日昼ご飯を食べながら勉強会があり、症例や知識の共有をします。月に2~3回は昼カンファで自分の症例をプレゼンテーションしました。午後になると残りの仕事を終わらせて、気づくとあっという間に夜に。先輩の先生方や同期と近くの温泉や夕食を食べに行ってからまた夜の12時近くまで残りの仕事…。一日、一週間はあっという間でがむしゃらに駆け抜けた3カ月間でした。

あたたかい

先生方はみな個性的で独特の感性を持っており、研修医室や医局ではいつも笑いが絶えなかったように思います。諏訪中央病院の同期の女の子と時間があれば食事、温泉、ドライブ、買い物…息抜きと励まし合いをしながら日々を過ごしました。3月初旬には毎年恒例の研修医のイベントがあり、研修医全員で河口湖へ温泉旅行に行きました。お酒を飲みながら夜中まで語りあったり、富士サファリパークでアルパカと戯れたり。走る車の窓から夕日に照らされた八ヶ岳を見て、また明日から仕事だ~と思った日が懐かしいです。

屋根瓦式の教育

この病院でまずはじめに学んだのは患者さんを頭の先から足の先まで診察すること。そして、病歴を細かくとる。『history』と『physical』です。自分の患者さんをよく問診・診察することで診断や治療の手掛かりになります。採血・検査が日々充実してきている医療現場ですが、基本に忠実に診察すれば、過剰な検査を行わなくてもある程度は診断を絞ることができます。また、ベッドサイドに何度も足を運ぶことで、患者さんの状態の変化にすぐに気づき、また患者さんとの信頼関係も築くことができます。電子カルテの時代となり、パソコンに向かう機会が多くなっていますが、ベッドサイド・病棟に行くことが何よりも研修医の私にとって勉強になりました。そして、患者さんと接することで主治医としての責任、患者さんへの愛情を持つことが出来るようになったと思います。

急性期から在宅、そして被災地にも

諏訪中央病院ではER、ICU、一般病棟、緩和ケア、在宅まで全ての医療に関わることができます。研修中に指導医の先生と一緒に在宅診療に向かいました。診察バッグとカルテを持ち、向かったのは四方を田んぼに囲まれた農家の一軒家。和室に医療用ベッドがあり、そこには脳梗塞で失語・麻痺で寝たきり経管栄養の患者さんがいらっしゃいました。娘さんが手際よく吸引したり、経管栄養をつないだりと、看護師さん顔負けの手つきで献身的に看病されていました。重度の脳梗塞は転院・療養という考え方の病院診療だけしか経験していなかった私にとっては、在宅医療という一側面を見ることが出来てとても新鮮で驚かされました。

さらに諏訪中央病院では3月の大震災後すぐに災害医療チームを編制し、被災地の診療に向かっていました。短期間でなく被災地が復興するまでの長期間にわたって、現地の診療に携わることを目標にされており、交代で途切れることなく医師や看護師、薬剤師が派遣されています。

みんなに支えられて

諏訪中央病院の指導医の先生、上級医の先生や同期に支えられた3カ月間の研修でした。

不慣れで未熟な部分も支えて下さったおかげで医師としての基礎を学ぶことが出来たと思います。そして何よりも、患者さんや医療に対しての熱い気持ちを諏訪中央病院で貰いました。これからの長い医者人生で、疲れたり迷ったりした時はこの研修での自分を振り返ってみようと思います。

臨床研修医 吉井 久倫この研修で医師としての基盤ができた

急性期から慢性期まで

2008年8月から2カ月間、諏訪中央病院で「地域医療」研修をさせてもらいました。諏訪中央病院は「暖かな急性期病院」というフレーズを掲げています。救急車の受け入れなどの救急体制を行いつつ、急性期が過ぎれば回復期や療養型病棟へ移すといった急性期~慢性期まで研修できる病院でした。また病院へ通う事が困難なお年寄りなどへの在宅医療も行っています。

勉強しなければ救えない

配属されるのは総合診療科。外来の振り分けをしたり専門科の隙間を埋めたりするのではなく、内科初診外来から救急外来、ICU管理から一般病棟、回復期病棟や療養病床まで必要であれば何でも見るというものでした。頭から足まで全身を見るといった印象を自分は持ちました。この科で様々な疾患を経験させてもらえます。私が経験した疾患では脳梗塞・前庭神経炎・偽膜性腸炎・アルコール依存症・腎盂腎炎・不明熱・肺炎・COPD・胃潰瘍など多岐に渡ります。研修医はこれらの疾患を主治医として見ることになります。治療計画や退院までのマネージメント・家族へのムンテラなどをチームの指導医・上級医に相談しながら行いました。

研修医でこのような経験が出来たのはとても貴重でした。医療としての流れを把握できたこと、コメディカルとのつながり、また何より主治医として患者と密に接することで「自分が勉強しなければこの患者は救えない」という強い責任感を持つことが出来ました。
また本当に何度もベッドサイドへ行き病歴と身体所見を取りに行ったとことが印象深かったことです。「病歴・身体所見で検査前確率を上げ検査をオーダーする」簡単なようでなかなか身につかないことでした。どうしても採血データなどに頼りがちになってしまい、注意を受けました。この研修で病歴・身体所見の大事さを学ぶことが出来ました。

刺激的な勉強体制

この病院の特色と感じたのは研修医の勉強体制に非常に積極的であるということです。週2回朝に後期研修医の指導のもと後期・初期研修医合同カンファがあり、毎昼には食事をしながらその日に入った入院患者や難しい症例についてランチカンファレンスをします。その場には上級医が居合わせ研修医を指導していました。また教育回診という県外の病院の先生を招き3~4日間に渡り症例発表・ベッドサイドティーチング・ワークショップなどを行っていました。プレゼンテーション・身体所見の取り方などの向上を行い、他の病院の先生を招くことで常に新たな刺激を取り入れていました。
また自分の研修中には佐久総合病院との合同感染症勉強会があり、そこでの同期研修医とのふれあいはとても刺激になりました。

研修を終えて

この2カ月間の研修は「辛かった」というのが正直な感想です。しかし東海大で初めて来た自分に対して指導医・上級医の方々が自分を1人の医師として熱心に指導してくれたことにとても助けられ、感謝の気持ちでいっぱいです。また同期研修医の方々も親切にして頂き、休日には食事などに連れて行ってもらい研修以外で楽しい思い出を作ってもらいました。この研修で医師としての基盤が出来、またたくさんの方々との交流を持てたことなど今後の医師人生で大きなものを得られた2カ月間でした。

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