移植外科

診療内容

 当診療科では、主に腎移植を中心として慢性腎不全患者に特有な疾患の外科的治療全般を行なっております。

1) 腎臓移植

腎臓移植の手術とその後のフォローアップを、同じ第1 診療センター内の腎内分泌代謝内科と連携して行 っております。慢性腎不全の末期において選択できる腎代替療法は3 つの選択肢があります。すなわち、血 液透析、腹膜透析、そして腎臓移植です。透析療法に比べて腎臓移植では、失われた腎臓機能が回復し、生 活の質を格段に向上させます。それだけでなく、患者さんにとって生命予後をも改善することがわかってい ます。本邦での腎移植の生着率は年代ごとに向上しており、最近では97.8%( 1 年)、92.8%( 5 年)と良好 です。外来では腎移植前後の診療のみならず、移植に関する相談を、移植看護面談としても行っております。

<生体腎移植>

腎臓を提供できる方は、自らの意思で腎提供を希望されている親族(配偶者を含む)で、生体腎ドナーと いいます。片方の腎臓を患者さんに提供するので腎臓機能が正常であることはもちろん、健康であることが 必要で、様々な精密検査を行って判断します。 血液型が異なっていても生体腎移植はできます。生体腎移植は、夫婦間を含む親族間で行うことが可能で、 親族とは6 親等以内の血族、3 親等以内の姻族と定義されております。

<先行的腎移植>

先行的腎移植とは、慢性腎臓病で腎機能が低下した時期に、透析を行わずに腎臓移植をして治療をする方法です。当科では腎代謝内科と連携して、条件が整えば積極的に先行的腎移植を行う方針で考えております。

<献腎移植>

亡くなられた方の善意で腎臓を提供していただく移植のことです。献腎移植には心臓死からの移植と脳死からの移植があります。献腎移植をうけることを希望される場合には、臓器移植ネットワークにあらかじめ登録する必要があります。

2) 透析アクセス(透析シャント、腹膜カテーテル)手術

よりよい血液透析を行うためには良好な透析シャントが必要です。シャント血管狭窄や閉塞など、透析シ ャントに関連した様々な合併症に対して、日帰り(外来)あるいは入院にて、治療・手術を行っています。 腹膜透析患者さんのカテーテルに関連した手術も行っています。

3) 腎原性副甲状腺機能亢進症に対する外科的治療

慢性透析患者にとって重大な合併症である、腎原性二次性副甲状腺機能亢進症は、内科的治療が効かなく なると手術が必要となります。そのような患者さんに対して、副甲状腺摘出術を行っています。透析患者さ んの副甲状腺機能を腎代謝内科と連携して的確に管理していきます。

4) 摘腎移植登録

日本臓器移植ネットワークへの登録を希望される患者さんの登録と、待機期間中のフォローアップを行っ ています。

主な対象疾患

  • 腎臓移植を希望する患者(相談だけでも受け付けています)
  • 献腎移植登録を希望する患者
  • 透析アクセス(透析シャント)狭窄および閉塞など
  • 副甲状腺機能亢進症

主な診療実績

東海大学医学部付属病院では、2022年までに300例以上の生体・献腎移植の実績があり、毎月2 件の生体 腎移植を定期的に行っております。副甲状腺摘出術(2022年):14件(原発性を含む)、透析アクセス関連手術(2022年):250件以上。

ご挨拶

移植外科は、2012年4月に新設された診療科ですが、当院での腎移植は1976年から行っています。外科学系移植外科が新設され、腎移植医療を、内科系との連携でより充実した体制で行えるようになりました。
初期の軽症の慢性腎臓病から、慢性腎不全となり透析療法をうけている患者さん、さらに腎移植をうけた患者さんなど、様々な段階の腎臓疾患の患者さんを、内科と外科が連携して同じ第一診療センターで診察し、外科的内科的合併症に対応しています。透析療法に至る前に腎移植を行う「先行的腎移植」も積極的に行っています。
腎移植の今後の課題は、いかに長期に移植腎機能を維持するかですが、それには高血圧、脂質代謝異常、糖尿病などいわゆる成人病といわれる合併症をしっかり管理することが重要です。当院の第一診療センターでは、移植外科医以外に腎代謝内科医・専門看護師が腎移植患者さんの診療に参加して、長期に移植腎機能を維持できるよう努めています。

移植外科 診療科長
中村 道郎

医師一覧

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