緩和ケア科

診療内容及び対象疾患

緩和ケアは、がんの治療が終わった後のケアではなく、がんの診断時の早期に始まり治療と並行して行われます。さらに世界保健機構(WHO)では、緩和ケアはがん以外にHIV、根治不能な神経疾患、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、認知症、肝不全なども対象疾患としておりわが国においても今後の課題であります。がんの苦痛は、身体的・精神的・社会的に加えスピリチュアルな苦痛から成る全人的苦痛であり、その緩和を図ることは患者さんのQOLの向上にかかすことができません。われわれは、医師・看護師・薬剤師・栄養士・作業療法士・ソーシャルワーカーからなる多職種のスタッフが緩和ケアにかかわり、身体症状、精神症状のある患者さん及びそのご家族の症状緩和・QOLの向上を図っています。 多くの手術適応患者を対象とする急性期病院である当院においては、医療の継続性の点からも各関係医療施設の皆様と緊密な関係を築き連携を図ることが重要であります。また、患者の状態によっては、当院のような急性期病院ではなく緩和ケア病棟を有する病院やホスピスで過ごすほうがより患者の満足が得られる場合があり、このような場合は十分な話し合いのもと主治医、医療連携センターと連携してより良い医療・看護等が提供できるよう対応しています。さらには、かかりつけ医とともに当院内外で連携し共同診察を積極的に行い、早い段階からの緩和医療の導入をはかり、退院後も協力・連携を保ち緩和医療を行うよう努めています。

身体的ケア

がん患者さんの身体的苦しみの代表として痛みがあります。がん患者さんの約80%は何らかの痛みを経験するといわれていますが、鎮痛薬の適確な使用に加え放射線治療や神経ブロックを組み合わせることによってその痛みの多くをコントロールできるとされています。しかしがんの苦しみには、痛み以外に倦怠感・食欲不振・悪液質・悪心・嘔吐・便秘・腹水・呼吸困難・不眠などがありそれらの治療として色々な薬物治療に非薬物ケアを併用することによって苦痛を緩和出来るよう多職種チームで対応しています。しかし、これらの症状が重症化してくると患者さんの日常生活は非常に制限され人間としての尊厳を損なうことにもつながるため精神的なケアに留意することが重要です。そのためにわれわれはがんと診断された時から患者さんに対して身体症状の緩和と並行して精神的苦痛の緩和にも一緒に取り組み患者さんが安楽に過ごせるように努めています。

精神的ケア

がん患者さんの多くが、病気の告知に加え病状の変化や治療方法の変更に伴い様々な情動反応を経験します。 恐怖や不安から途方に暮れたり、治療状況による不安の誘発や治療中の突然の気分や心的機能の変化、さらには精神的苦痛から身体症状を引き起こすこともあります。その様な患者さんの持つ様々な苦痛を和らげるように努めています。

主な診療実績

様々ながん患者の苦痛緩和の依頼があり対応しているが、耳鼻科領域、婦人科領域の患者についての依頼が多き傾向にある。

(2015年4月~12月)

緩和ケア 患者数(人) 新規依頼患者数(人)
入院患者(身体・精神) 173 134
外来(身体) 213 46
外来(精神) 153 28
緩和ケア相談 18 13

ご挨拶

緩和ケアはがんと診断された初期の段階からかかわっていく医療です。当院では医師・看護師・薬剤師・栄養士をはじめ多職種のメンバーが状況に応じて患者さんにかかわらせていただき、全人的苦痛を和らげ安心・信頼できる医療の提供を心がけますのでご相談いただければ幸いです。 また、緩和ケアは病院、診療所、開業医・在宅医などが連携しネットワークを形成することにより切れ目のない医療を提供することが非常に重要であると考えますので各医療関係者の皆様とのネットワークづくりにも取り組んでいきたいと考えています。

医師一覧

身分/医師名 専門分野/特に専門とする領域 専門医資格 外来診療日
教授/
竹中 元康
緩和医療
ペインクリニック
麻酔/
緩和ケア(身体症状)、疼痛管理、全身管理
日本緩和医療学会暫定指導医)/日本麻酔学会指導医/日本ペインクリニック 学会専門医 月・火・水
講師/
矢野 広
臨床精神医学
リエゾン精神医学
緩和ケア
精神科リハビリテーション/ 一般精神疾患の薬物療法・精神療法、身体疾患に伴う精神症状の診断治療、癌患者の精神症状の緩和ケア、社会復帰支援及び家族支援
(日本精神神経学会専門医・指導医) 月・火
准教授/
鈴木 育宏
乳腺・甲状腺
薬物療法/
乳癌に対する縮小手術、化学療法、内分泌療法、分子標的療法
日本外科学会指導医・専門医/日本乳癌学会乳腺専門医/(検診マンモグラフィ読影認定医) 水・木
助教/
伊藤 美保
麻酔
ペインクリニック
緩和医療/
小児麻酔、疼痛管理、緩和ケア
日本麻酔科学会指導医/日本ペインクリニック学会専門医 -

緩和ケア研修会について

緩和ケア科は院内および近隣の医療機関でがん診療を受けている患者さんとそのご家族を対象に緩和治療を行っています。その診療はがんと診断を受けたその直後から終末期までの幅広い期間を対象としています。身体症状専従医と兼任医が各々1名、精神症状専任医1名と兼任医3名、さらに専従看護師、兼任薬剤師、兼任栄養士が各々1名の計9名を中心に運営しています。 院内での診療はがん診療に携わる診療科と協力し、がん患者さんとそのご家族が苦痛なくがん治療を受けられるように薬物療法による身体および精神的な苦痛の緩和に努めています。昨年は5大がんをはじめとして稀な皮膚がん、脳腫瘍等の成人悪性腫瘍から小児がんまで様々な約300症例の緩和治療に携わりました。これら身体的・精神的な苦痛緩和のみならず、がん治療に伴う社会的不安や退院後の在宅がん診療を少しでも苦痛なく行えるよう、社会福祉士により構成される総合相談室や在宅医療室の看護師と連携してこれらの問題解決に努めています。さらに院内緩和に関する情報提供や教育、がんに伴うリンパ浮腫に関する相談や指導も行っています。 また全てのがん診療に携わる医療従事者が緩和ケアについての基本的知識を習得する目的のため、当院主催の緩和ケア研修会を年2回開催しています。2014年4月現在、院内受講修了者は、医師111名、医療従事者99名であり、院外修了者は、医師17名、医療従事者22名となっています。これら研修会以外にも地域の緩和診療に携わる医療従事者を対象とした勉強会を主催し、合同カンファレンスを開催することで、地域との医療連携を図っています。

緩和ケア講習会

緩和ケア研修会修了者一覧

「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会の開催指針」(平成20年4月1日付け健発第0401016号厚生労働省健康局長通知)に基づく研修修了者
2017年4月27日現在