諏訪中央病院(長野)研修レポート

急性期から慢性期まで

諏訪中央病院は諏訪湖付近の茅野市の小高い丘の上に立つ中規模病院で、急性期を中心に回復期リハや療養にも対応する病院です。立地周辺の印象は穏やかで夏は避暑地として都会からの多くの観光客でにぎわいます。町の雰囲気とはうってかわって病院内は活発な医療活動や勉強会が行なわれ、研修医も主治医として重い責任を持ちながら一生懸命働いていました。
諏訪中央病院は「暖かな急性期病院」というフレーズを掲げています。救急車の受け入れなどの救急体制を行いつつ、急性期が過ぎれば回復期や療養型病棟へ移すといった急性期~慢性期まで研修できる病院でした。また病院へ通う事が困難なお年寄りなどへの在宅医療も行っています。

勉強しなければ救えない~屋根瓦式の教育~

配属されるのは総合診療科。まずはじめに学んだのは患者さんを頭の先から足の先まで診察すること。そして、病歴を細かくとる。『history』と『physical』です。外来の振り分けをしたり専門科の隙間を埋めたりするのではなく、内科初診外来から救急外来、ICU管理から一般病棟、回復期病棟や療養病床まで必要であれば何でも見るというものでした。自分の患者さんをよく問診・診察することで診断や治療の手掛かりになります。
私が経験した疾患では脳梗塞・前庭神経炎・偽膜性腸炎・アルコール依存症・腎盂腎炎・不明熱・肺炎・COPD・胃潰瘍など多岐に渡ります。研修医はこれらの疾患を主治医として見ることになります。治療計画や退院までのマネージメント・家族へのムンテラなどをチームの指導医・上級医に相談しながら行いました。
研修医でこのような経験が出来たのはとても貴重でした。医療としての流れを把握できたこと、コメディカルとのつながり、また何より主治医として患者と密に接することで「自分が勉強しなければこの患者は救えない」という強い責任感を持つことが出来ました。

採血・検査が日々充実してきている医療現場ですが、基本に忠実に診察すれば、過剰な検査を行わなくてもある程度は診断を絞ることができます。また、ベッドサイドに何度も足を運ぶことで、患者さんの状態の変化にすぐに気づき、また患者さんとの信頼関係も築くことができます。電子カルテの時代となり、パソコンに向かう機会が多くなっていますが、ベッドサイド・病棟に行くことが何よりも研修医の私にとって勉強になりました。そして、患者さんと接することで主治医としての責任、患者さんへの愛情を持つことが出来るようになったと思います。

刺激的な勉強体制

病院の特色と感じたのは研修医の勉強体制に非常に積極的であるということです。週2回朝に後期研修医の指導のもと後期・初期研修医合同カンファがあり、毎昼には食事をしながらその日に入った入院患者や難しい症例についてランチカンファレンスをします。その場には上級医が居合わせ研修医を指導していました。また教育回診という県外の病院の先生を招き3~4日間に渡り症例発表・ベッドサイドティーチング・ワークショップなどを行っていました。プレゼンテーション・身体所見の取り方などの向上を行い、他の病院の先生を招くことで常に新たな刺激を取り入れていました。
また自分の研修中には佐久総合病院との合同感染症勉強会があり、そこでの同期研修医とのふれあいはとても刺激になりました。

急性期から在宅、そして被災地にも

諏訪中央病院ではER、ICU、一般病棟、緩和ケア、在宅まで全ての医療に関わることができます。研修中に指導医の先生と一緒に在宅診療に向かいました。診察バッグとカルテを持ち、向かったのは四方を田んぼに囲まれた農家の一軒家。和室に医療用ベッドがあり、そこには脳梗塞で失語・麻痺で寝たきり経管栄養の患者さんがいらっしゃいました。娘さんが手際よく吸引したり、経管栄養をつないだりと、看護師さん顔負けの手つきで献身的に看病されていました。重度の脳梗塞は転院・療養という考え方の病院診療だけしか経験していなかった私にとっては、在宅医療という一側面を見ることが出来てとても新鮮で驚かされました。

さらに諏訪中央病院では2011年3月の東日本大震災の際には、発生後すぐに災害医療チームを編制し、被災地の診療に向かい、短期間でなく被災地が復興するまでの長期間にわたって、現地の診療に携わることを目標にされており、交代で途切れることなく医師や看護師、薬剤師が派遣されていたと当時の貴重な経験をお話いただきました。

みんなに支えられて

諏訪中央病院の指導医の先生、上級医の先生や同期に支えられた3カ月間の研修でした。

不慣れで未熟な部分も支えてくださったおかげで医師としての基礎を学ぶことが出来たと思います。そして何よりも、患者さんや医療に対しての熱い気持ちを諏訪中央病院で貰いました。これからの長い医者人生で、疲れたり迷ったりした時はこの研修での自分を振り返ってみようと思います。

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