難病治療研究センター

特色

難病とは原因不明で、まだ治療法が確立されていない疾患で、慢性的に経過し後遺症も起きることがあるため経済的、精神的に負担が大きい病気のことをさしています。難病の中には全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎などの膠原病、再生不良性貧血などの血液疾患、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症などの神経疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病など消化器疾患をはじめ、肝臓疾患、心疾患、肺疾患、皮膚疾患、腎疾患、内分泌疾患、骨・関節疾患、遺伝子疾患など多領域の疾患が含まれます。その多くは、医療助成の対象となる国の特定疾患に指定されます。2024年月から医療助成の対象は341疾患になりました。
神奈川県では、難病の治療や治療法に係わる研究を推進し、患者さんやご家族の医療相談や医療従事者の研修を行うなど難病患者さんを支援する目的で、県内に4 拠点病院を指定し、難病治療研究センターを設置、その運営を補助していますが、当センターもその1 つです。
また、当センターでは難病の治療、治療研究や医療相談、講演会を行っています。それぞれの疾患の診療は、リウマチ内科、血液腫瘍内科、脳神経内科、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、腎内分泌代謝内科、整形外科、皮膚科などの各専門診療科で行っています。医療相談は病院の総合相談室を窓口にし、ソーシャルワーカーが医師、薬剤師、管理栄養士と連携しながら、患者さんやご家族からの相談に応じています。
講演会は、年に2 回、「難病講座」という、患者さんやご家族、医療関係者を対象とした講演会を開催し、治療や療養に役立つような難病の最新情報の提供を行っております。

リウマチ内科

リウマチ内科では国から特定疾患と指定されて医療助成の対象となっている多くの難病の診断・治療をおこなっています。代表的な疾患に、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎、血管炎症候群などがあります。これらの疾患は、全身の諸臓器を様々な程度に傷害されることが特徴で、症状を改善させるための診断ならびに治療法の進歩が欠かせません。また、治療は長期間にわたるため、患者さんおよびそのご家族に対するたゆまない支援も必要です。

脳神経内科

脳神経内科が扱う多くの難病は、国から特定疾患と指定されて医療助成の対象となっています。代表的な疾患に、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、多発性硬化症/視神経脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチー、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症などがあります。これらの疾患は、今まで治療法がなかった疾患が多いですが、近年、新しい生物学的製剤の登場により治療可能な疾患が増えてきております。また、治療は長期間にわたるため、患者さんおよびそのご家族に対するたゆまない支援も必要です。

消化器内科

消化器内科では、国からの医療助成対象となっている消化器系の難病の診療を担当しています。代表的な疾患としては、特定疾患中、最多の患者数が登録されている潰瘍性大腸炎をはじめ、類縁疾患であるクローン病、原発性胆汁性胆管炎、自己免疫性肝炎を含むいくつかの肝疾患などが挙げられます。これらの疾患では、多くの場合、長期にわたる治療、管理を必要とされ、患者さんやご家族へのサポートをはじめ、さらなる診断法、治療法などの研究、進歩が望まれており、私たち消化器内科もその一部を担うべく注力しています。

循環器内科

循環器内科では国から特定疾患と指定されて医療助成の対象となっている多くの難病の診断・治療を行っています。代表的な疾患として、特発性拡張型心筋症、肥大型心筋症などの心筋症が挙げられます。また、近年はファロー四徴症や大血管転位症などの先天性心疾患が小児期に治療を受け、成人移行に伴い成人先天性心疾患として当科に通院されるケースも増えています。さらに、呼吸器内科と連携して慢性血栓塞栓性肺高血圧症や肺動脈性肺高血圧症などの診療にも当たっています。治療法は常に進歩しており、症状・予後を改善するために薬物療法だけでなく、侵襲的加療により劇的な改善が得られる疾患もあります。

呼吸器内科

呼吸器内科で診療する指定難病として最も患者数が多いのは、特発性間質性肺炎です。2024年度から診断基準と重症度分類が改定されて医療助成を受けやすくなっていますので、在宅酸素療法を受けている患者さん、高価な抗線維化薬(ピレスパ、オフェブ)を服用している患者さんは一度主治医にご相談ください。その他に、サルコイドーシス、リンパ脈管筋腫症、自己免疫性肺胞蛋白症、線毛機能不全症候群、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、肥満低換気症候群なども呼吸器内科で診療している指定難病に含まれます。

腎内分泌代謝内科

腎内分泌代謝内科で診療する疾患の一部は、国から特定疾患と指定されて医療助成の対象となっています。
腎臓領域での代表的な疾患には、IgA腎症、多発性嚢胞腎、アルポート症候群、急速進行性糸球体腎炎、抗糸球体基底膜腎炎、一次性ネフローゼ症候群、一次性膜性増殖性糸球体腎炎、紫斑病性腎炎、IgG4関連疾患などが含まれます。これらの疾患は、腎臓のみならず全身の諸臓器もさまざまな程度に傷害されることが特徴であり、症状を改善するためには腎生検による早期診断と治療介入が重要になります。
内分泌領域での代表的な疾患には、下垂体性ADH分泌異常症、下垂体性TSH分泌亢進症、下垂体性PRL分泌亢進症、クッシング病、下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症、下垂体性成長ホルモン分泌亢進症、下垂体性前葉機能低下症などが含まれます。これらの疾患は、ホルモンの分泌異常により症状が出現するため、ホルモンを補充する治療やホルモンを抑制する治療を行います。
糖尿病領域での代表的な疾患には、ミトコンドリア病、家族性高コレステロール血症などが含まれます。これらの疾患も、未治療のままでは全身の諸臓器がさまざまな程度に傷害されることため、早期に診断し、病態に応じた治療を行うことが重要です。

皮膚科

皮膚科関連の病気としては、天疱瘡、類天疱瘡などの自己免疫性水疱症、スティーヴンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症といった重症型薬疹、膿疱性乾癬、神経線維腫症、特発性後天性全身性無汗症などが指定難病となっています。原因が解明されていない病気、あるいは原因は解明されているものの重症、難治性の病気であり、患者さんの多くが苦しんでいらっしゃいます。根気強く治療しながら、医学の進歩による原因解明、新しい治療の開発が期待されます。

ご挨拶

難病治療研究センターは1988年に神奈川県の指定を受け、設立されました。
難病とは原因不明で、まだ治療法が確立されていない疾患で、慢性的に経過し後遺症も起きることがあるため経済的、精神的に負担が大きい病気のことをさしています。神奈川県では、難病の治療や治療法に係わる研究を推進し、患者さんやご家族の医療相談や医療従事者の研修を行うなど難病患者さんを支援する目的で、県内に4拠点病院を指定し、難病治療研究センターを設置、その運営を補助しています。現在、当センターは、神奈川県の委託事業として運営されていますが、今後、難病医療体制の改革に基づき、難病医療拠点病院を県内に配置することが決まっています。このような難病対策の改革に係わる新制度の下で、患者さん、ご家族、医療関係者に最新情報の提供を行ってまいります。

難病治療研究センター長
佐藤 慎二