先進医療

先進医療とは

先進医療とは、新しい医療技術と患者さんの要望の多様化により、保険診療の医療水準を超えた最新の先進技術として、厚生労働大臣から承認された医療行為のことを言います。

先進医療A

  • 未承認、適応外の医薬品、医療機器の使用を伴わない医療技術
  • 未承認、適応外の体外診断薬の使用を伴う医療技術等であって、当該検査薬等の使用による人体への影響が極めて小さいもの

先進医療B

  • 未承認、適応外の医薬品、医療機器の使用を伴う医療技術
  • 未承認、適応外の医薬品、医療機器の使用を伴わない医療技術であって、当該医療技術の安全性、有効性等に鑑み、その実施に係り、実施環境、技術の効果等について特に重点的な観察・評価を要するものと判断されるもの

当院において、現在承認を受けている先進医療は以下の通りです。

  先進医療技術名 実施診療科 承認年月日
先進医療A 急性リンパ性白血病細胞の免疫遺伝子再構成を利用した定量的PCR法による骨髄微小残存病変(MRD)量の測定(他の保険医療機関に対して検体の採取以外の業務を委託して実施する保険医療機関) 小児科 2013年2月承認
先進医療B パクリタキセル静脈内投与(1週間に1回投与するものに限る。)およびカルボプラチン腹腔内投与(3週間に1回投与するものに限る。)の併用療法 婦人科 2013年1月承認
アルテプラーゼ静脈内投与による血栓溶解療法 神経内科 2015年9月承認

当院で実施可能な先進医療の概要について

先進医療A

先進医療
技術名
急性リンパ性白血病細胞の免疫遺伝子再構成を利用した定量的PCR法による骨髄微小残存病変(MRD)量の測定(他の保険医療機関に対して検体の採取以外の業務を委託して実施する保険医療機関)
適応症 急性リンパ性白血病(ALL)または非ホジキンリンパ腫(NHL)であって初発時に骨髄浸潤を認めるリンパ芽球性リンパ腫若しくはバーキットリンパ腫
技術の概要 初発時に白血病細胞の免疫グロブリンまたはT細胞受容体遺伝子の再構成をPCRで検出し、症例特異的プライマーを作成します。次にALLの化学療法開始5週(ポイント1、TP1)および12週(ポイント2、TP2)の骨髄MRD量を、初発時に作成したプライマーを用いてRQ-PCRにて定量的に測定し、MRD量が少ない(10-4未満=腫瘍細胞が1万個に1個未満)低リスク群、MRDが多い高リスク群(10-3以上=腫瘍細胞が千個に1個以上)、それ以外の中間リスク群の3群に分類します。具体的には、施設で採取したTP1とTP2の骨髄のMRD量を治療開始後12-14週の間に測定し、結果をALL治療プロトコールで定められたリスク別層別化治療を実施します。
先進性 モノクローナルな白血病性リンパ芽球の免疫関連遺伝子(Ig・TcR)再構成パターンを分子マーカーとして骨髄中の白血病細胞の初期治療への総合的な反応性をモニタリングすることで治療の個別化を可能とします。
効果 この技術により、ALL患者さんのより正確な予後予測が可能となり、治療開始12週後の測定結果に基づいて造血幹細胞移植の適応が判定できることから、不必要な大量化学療法や造血幹細胞移植を減らすことが期待できます。
また、将来的には予後良好とされる患者群を同定することで、より毒性の少ない治療法の開発が期待できます。

先進医療B

先進医療
技術名
パクリタキセル静脈内投与(1週間に1回投与するものに限る。)およびカルボプラチン腹腔内投与(3週間に1回投与するものに限る。)の併用療法
適応症 上皮性卵巣がん、卵管がんまたは原発性腹膜がん
技術の概要 局所麻酔または硬膜外麻酔下の小開腹を行い、腹腔ポートを留置します。このポートより、カルボプラチンを腹腔内に直接投与します。また、全身化学療法としてパクリタキセル経静脈内投与を併用します。
この化学療法は21日間を1コースとして行い、パクリタキセルは第1日目、第8日目および第15日目に標準量(80mg/m2 )を経静脈投与、カルボプラチンを第1日目に標準量(※AUC6 (mg/L)・h)を腹腔内投与し、計6コースを行います。
AUC : area under the blood concentration time curve(薬物血中濃度-時間曲線下面積)
先進性 卵巣癌は早期発見が難しく、多くの症例で診断時にすでに腹腔内に広がった状態(腹膜播種)になっています。そこで抗がん剤を腫瘍のある腹腔内に直接投与する手法(腹腔内化学療法)が考案され、海外での卵巣癌における大規模臨床試験の結果をまとめた解析から、通常用いる静脈内に投与する化学療法と比較して死亡リスクを21.6%減少させることが明らかとなりました。現在、進行卵巣癌に対する腹腔内化学療法はその臨床効果において期待されていますが、今回使用する薬剤は腹腔内投与に対する保険適応がないため、先進医療として治療を行います。
効果 本先進医療は、特定非営利活動法人 婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)が行う多施設共同臨床試験(JGOG3019試験)に参加いただき、試験治療(腹腔内化学療法)群に割り付けられた場合に適用となります。進行卵巣癌患者さんに対する初回化学療法に腹腔内投与の手法を用いることで、従来の治療法に比べてより良い治療効果が得られることを期待しています。
先進医療
技術名
アルテプラーゼ静脈内投与による血栓溶解療法
適応症 急性脳梗塞(当該疾病の症状の発症時刻が明らかでない場合に限る。)
技術の概要 発症時刻不明の急性脳梗塞と診断された20歳以上の患者さんで、最終未発症確認時刻から治療開始可能時刻まで4.5時間以上12時間以内かつ発見から4.5時間以内に治療開始可能な場合に対象となります。この臨床試験では、rt-PA(アルテプラーゼ)を使うか、rt-PA以外の標準的な治療を行うかを、コンピューターで無作為に1:1に割り付けます。rt-PA治療群の患者さんには、アルテプラーゼの点滴静注を1時間かけて行います。標準治療群の患者さんには、rt-PA以外の薬・点滴による一般的な内科治療を行います。翌日(24時間後)と7日後にMRIなどの撮影と診察を行い、脳梗塞の症状の重症度や日常生活の自立度を専用の評価尺度(NIH stroke scale, modified Rankin Scale)で評価します。
先進性

虚血性脳卒中は後遺症を残す可能性が高く、死因だけでなく要介護性疾患としても重要です。rt-PA静注療法は最も有効な脳梗塞の治療法ですが、発症4.5時間以内の使用という制限があり、全脳梗塞の5%程度にしか行われていません。そのため、睡眠中発症および発症時刻不明の脳梗塞では有効性の確立した治療法に乏しい状況です。この臨床試験では、頭部MRI検査で発症から4.5時間以内の可能性が高く、頭蓋内出血の危険性が低い虚血性脳卒中に対してrt-PA静注療法の有効性を検証します。

効果 現在までの治療では効果があまり期待できなかった睡眠中発症および発症時刻不明の脳梗塞で、rt-PA静注療法により3ヶ月後の後遺症なし又は軽微な後遺症で完全自立の割合が、通常の治療を行った患者さんより10%程度増えることが期待されています。これにより、生命予後が改善するのみではなく、要介護となる後遺症を抱えた症例の減少に繋がる可能性があります。