乾癬・アトピーセンター

概要

「乾癬とアトピー性皮膚炎のセンターってなに?」

皆さんはそんな疑問を生じられるかもしれません。乾癬は皮疹(ひしん)を伴う慢性の皮膚の病気です。皮疹の出方により何種類かに分けられ、一部の乾癬では関節にも炎症が及び痛みが生じることがあります。幼少時に発症することもありますが、多くは成人発症です。

アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能が低下し、かゆみを伴う湿疹(しっしん)がよくなったり悪くなったりを繰り返す病気のことです。幼少時から発症することが多く、一部は自然に良くなりますが、成人時に再燃したり成人で発症し長期間継続したりすることもあります。顔面に皮疹がみられることがあり、掻いてしまうことなどにより網膜剥離や白内障など目の疾患が生じることがあります。

2つの皮膚疾患の共通点は長期間皮膚に炎症が続くことです。「なにを当たり前のことを」とお感じになったと思います。ですが、皮膚は人間の中で最大の臓器であり、血管を通じて内臓と繋がっているということを思い出してください。「最大の臓器である皮膚の慢性的なトラブルが内臓のトラブルに繋がることがあるかも。」と考えれば当たり前なことが、近年証明されつつあるしたら皆さんはどう思われますか?

15年程前より乾癬では皮膚のみならず、関節や肝臓、心臓、すい臓などにトラブル(併存症)が多いことが判明し、各科で協力しながら管理・治療することが大事と判明し(図1、図2)、10年程前には乾癬のみならず、アトピー性皮膚炎でも同様に併存症が多いことがわかりました(図3)。





当センターでは乾癬のみならず、アトピー性皮膚炎を含む慢性的な皮膚症状に悩んでおられる患者さん(掌蹠膿疱症、化膿性汗腺炎、結節性痒疹、慢性多型痒疹、透析に伴う皮膚そう痒症、慢性蕁麻疹、白斑、壊疽性膿皮症等)でも適切な皮膚治療をご提案するとともに、併存症の検索、各科での治療を進めて参ります。

ご挨拶

「皮膚は内臓の鏡」という言葉があります。

内臓のトラブルを皮膚の症状をみて察知し、各科の治療へ繋げることは皮膚科医冥利に尽きます。そうなれば逆に皮膚のトラブルが内臓へのトラブルへ繋がるかもと考えるのは自然に思います。10数年前の医学ではそれらの因果関係を証明することができず、机上の空論と言われていました。しかしながら、ここ数年の医学の進歩によりそれらの因果関係が証明され始め、今では様々な皮膚疾患が血管疾患を誘発することが知られています(図4)。



私は、2020(令和2)年11月に以前に勤務していた関西医科大学で乾癬センターを開設しました。それまでの乾癬診療は、皮膚症状は皮膚科で、関節症状はリウマチ・膠原病科や整形外科で、眼病変は眼科など縦割り体制で行われていましたが乾癬センターでは横のつながりを強化し全身くまなく診察し、質の高い治療を効率的に提供する部門として構成しました。結果、乾癬と診断され治療に難渋している患者さんや皮膚症状はまだ認められていないが乾癬に合併する症状や併存症を未然に診断して治療が可能でした。

当センターでは連携先のクリニックや病院からご連絡を頂ければ、適切な治療や検査を提案し、皮膚の治療のみならず、全身疾患の未病やコントロールを各診療科や栄養科などを通じて行います。事前に要望がわかれば、前もって当センターにて検査や他科・他センターの診療予約を入れさせていただくことで、当日受診してからの別日の他科受診や検査等をできるだけ少なく、効率よく受けていただけるように設定します。むろん相談のみでもかまいません。

我々が目指すのは「皮膚を入り口とした地域の患者さんの健康余命を伸ばすこと」です。皆さま皮膚について気になる事がありましたら、東海大学の乾癬・アトピーセンターへのご連絡をお待ちしています。

乾癬・アトピー性皮膚炎センター長
山﨑 文和


センターの院内での構造

連携クリニックや病院からセンターへの連携の構造