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呼吸器外科
診療内容
呼吸器外科では肺・縦隔・胸膜・胸壁などの胸部の外科疾患を担当しています。手術侵襲の軽減を目的として、小型肺癌、自然気胸、縦隔腫瘍などに対し、小さな手術創による胸腔鏡下手術(video assisted thoracoscopic surgery:VATS)を積極的に取り入れてきました。胸腔鏡下手術 video assisted thoracoscopic surgery(VATS)
1994年に二つの小さな皮膚切開創のみで手術を行う二窓法(two windows method)、さらに近年では一つの創のみで手術を行うone window & one puncture法を開発しました。従来の開胸創と比較し、美容的にはもとより、手術時間、術中出血量、術後の疼痛や呼吸機能の回復の面からはるかにすぐれています。これにより合併症のある患者さんや低肺機能の方、お年寄り・小児など、従来の手術方法では適応にならなかった患者さんでも安全に手術を受けることが可能になりました。ロボット支援胸腔鏡下手術 robotic assisted thoracoscopic surgery(RATS)
2021年12月からロボット支援下手術を導入いたしました。内視鏡手術支援ロボットであるダビンチXiを用いた手術では、開胸手術と比較して創の整容性だけでなく、術後肋間神経痛の軽減に優れていると報告されています。肺悪性腫瘍手術における従来のロボット支援胸腔鏡下手術アプローチ方法ではポート孔が5つ程度必要となり、胸腔鏡下手術と比較し創部の数が増える傾向がありました。当科の特色である減孔式手術の経験を応用し、2横指のwindowと8mmのポート1-2つを併用したアプローチを用いて、より負担の少ないロボット支援手術を目指しています。主な対象疾患
原発性肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、気胸、胸膜腫瘍(悪性胸膜中皮腫を含む)、漏斗胸、胸部外傷、肺気腫(肺容量減少手術 lung volume reduction surgery)、手掌多汗症(胸部交感神経遮断術)など主な診療実績
2014年1月から2023年12月までの9年間の呼吸器外科手術総数は3,326例で近年手術件数は増加傾向にあります。そのうち2,451例(74%)が胸腔鏡下手術でした。術後30日死亡は0.1%でした。この期間における代表的疾患の手術数は以下のようになっております。原発性肺がん
1,600例(1年平均178例)の手術を行いました。そのうち1,307例(82%)が胸腔鏡下手術でした。原発性肺がんに対するロボット支援胸腔鏡下手術は年間40例程度を実施しています。術式別には肺葉切除(2葉切除を含む)1,312例、区域切除56例、部分切除207例となっています。転移性肺腫瘍
320例の手術を行いました。そのうち293例(92%)が胸腔鏡下手術でした。縦隔腫瘍
390例の手術を行いました。疾患の内訳として胸腺上皮性腫瘍(胸腺腫・胸腺癌など)183例実施しています。近年では胸腔鏡下手術・ロボット支援胸腔鏡下手術の割合も増えており、2023年は63%(30例)が胸腔鏡下手術、32%(13例)がダビンチを用いた手術でした。自然気胸
377例の手術を行いました。自然気胸に対する手術は全例が胸腔鏡下に施行されており、多くは術後2日の入院で社会復帰が可能となっています。漏斗胸
56例の手術を行いました。チタン合金製のバーを胸の陥凹部に側胸部より挿入し、陥凹部を挙上します。1-2cm程度の小さな手術創のみで骨を切ることなく試行が可能となっており低侵襲な術式です。胸部外傷
23例の手術を行いました。外傷手術においても症例に応じて胸腔鏡下手術を導入し、術後の回復を助ける工夫を行なっています。ご挨拶
私たちの扱う病気は、固い胸郭(肋骨、胸骨、脊椎などに囲まれている部分)と呼ばれる部屋(胸腔)の奥深くにある臓器の障害です。このため、どんなに小さな病巣を切除しようとしても、固い胸郭の一部に分け入って、胸の中に胸部外科医の手を入れながら手術をしなければなりませんでした。そのため、病気の部分に至るまでの傷は大きくせざるを得ない状態でした。この状況を解決する一つの手段が胸腔鏡技術の治療手術への導入だったわけです。新しいことに取り組むということに対する東海大学の環境やスタッフ、そしてなんと言っても患者さんや患者さんのご家族の熱い応援の中で患者さんにとって必要なことと信じ、技術開発をしてきました。いつの時代でも、これでもう良いというような決まってしまった手術手技はありません。胸部外科医の絶え間の無い努力が必要です。私たちの診療科ではより卓越した手術手技で患者さんにより快適な生活を広く提供して参ります。
呼吸器外科 所属長
岩﨑 正之
呼吸器外科 診療科長
増田 良太