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心臓血管外科
診療内容
心臓血管外科では狭心症に代表される虚血性心疾患、心臓弁膜症等後天性心疾患、不整脈、大動脈瘤・大動脈解離を中心とする大動脈疾患、先天性心疾患、閉塞性動脈硬化症を含む四肢・内臓の動静脈疾患を対象とした外科治療を行っています。また、疾患の特異性から一刻を争う緊急性の高い患者さんの治療も担っており、当院が地域救急医療に貢献する使命を果たすという大方針を掲げていることもあって、少数精鋭のスタッフは文字通り粉骨砕身診療にあたっています。高度な外科治療の供給が私たちの目標かつ義務と考え、 外来診療では紹介患者さんの診断及び治療方針の決定と、術後早期の患者さんケアが中心です。病診連携とその発展のため、術後安定期に入られた患者さんは地元のクリニック等にお願いし、診療して頂くことを心 掛けています。主な対象疾患
虚血性心疾患では狭心症をはじめ、心筋梗塞後左室瘤、虚血性僧帽弁閉鎖不全症、心室中隔穿孔、左室破裂など。心臓弁膜症では大動脈弁閉鎖不全症・狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症・狭窄症、三尖弁・肺動脈弁の疾患や細菌性心内膜炎。収縮性心膜炎など心膜疾患。大動脈疾患では急性大動脈解離、真性大動脈瘤、大動脈縮窄症、外傷性大動脈損傷。末梢血管では閉塞性動脈硬化症を筆頭に四肢の血管の狭窄や急性もしくは慢性閉塞の他、下肢静脈瘤や静脈血栓症、腹部臓器の内臓動脈瘤等々。また、心疾患に合併した発作性もしくは慢性心房細動や心室頻拍の外科治療。洞不全や房室ブロックなど徐脈性不整脈も治療の対象です。先天性心疾患は今のところ学童期以降の患者さんを対象として、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症などの手術を行っています。主な診療実績
2023年に当科で手術をした患者さんは724人で、人工心肺使用開心術と胸腹部大動脈手術の症例数が計618例、末梢動脈手術が45例の他、下肢静脈瘤手術なども多数行っています。手術手技では冠動脈バイパス手術が57例、弁形成・弁置換術が276例、胸腹部大動脈の人工血管置換術もしくはステントグラフト留置術が279例と、代表的な疾患に対する手がまんべんなく行われているのが特徴と思います。東海大学医学部付属病院は高度救急医療を積極的に行っている施設であり、大動脈や末梢血管の手術例のうち30%以上が緊急手術です。また保存療法を行った患者さんを含め年間70例以上の急性大動脈解離症例を治療していますが、その多くが西湘地域の病院から救急車で転院搬送された患者さんです。私達が特に力を注いでいる領域は、虚血性心筋症に対するドール手術などの左室形成術(2002年から100例以上に施行)、大動脈基部拡張による大動脈弁閉鎖不全症に対する自己弁温存基部置換術(50例以上に施行)、僧帽弁形成術(僧帽弁手術の90%に施行)、心房細動に対するMaze手術(2023年は21例に施行)、大動脈瘤に対するステントグラフト留置術(2023年は80例に施行)などです。2011年度からは人工心肺装置を2 基並列、2017年からはハイブリッド手術室が使用可能な環境が実現し、ハイブリッド手術だけでなく予定手術中の緊急対応も可能となりました。地域医療にさらなる貢献を果たせるものと考えています。ご挨拶
当院の心臓血管外科常勤スタッフは10名前後で、うち5名が専門医です。主に後天性の心・大血管・末梢血管疾患の治療にあたっていますが、代表的な弁膜症・虚血性心疾患・胸部大動脈疾患の手術はほぼ同等の症例数で、人工心肺を使用して行う手術の数が年間200余例です。腹部大動脈を入れると、大動脈手術は年間180例程度になり、このうちおよそ3割が1分1秒を争う緊急手術になりますので、スタッフはまさに夜間・週末を厭わずに働き続けています。深夜に始めた緊急手術が翌朝になっても目途がつかないこともあり、予定手術が遅れたり、外来に出られなくなったりすることがあります。こういった場合もスタッフ全員の連係プレーで患者さんにご迷惑をおかけしないよう心掛けていますが、至らないこともあるかと存じます。気になるようなことがありましたら、遠慮なく投書箱などでお伝えくださるようお願いいたします。
心臓血管外科 診療科長
長 泰則