救命救急科

診療内容

 当院高度救命救急センターは、湘南・県西・一部県央地域を担当する三次救急医療施設として、重症救急 患者さんの診療に当たっています。2002年からさらに厚生労働省により高度救命救急センターの認可を受け、 基地病院として神奈川県ドクターヘリを運用し、神奈川県全域および山梨県南部の救命救急医療に貢献して います。また、洋上救急医療に運用当初から参画し、太平洋上を航行または操業中の船舶で発生した傷病者 を救命するために、海上保安庁・海上自衛隊と協力し診療チームを洋上に出動させ、海上での救命医療に大 きな役割を果たしています。さらに、災害拠点病院のひとつとして、神奈川県の集団災害医療システムを担 うとともに、DMAT(災害医療支援チーム)を編成し、災害発生現場に医療チームを派遣する態勢を整備 しています。
 2005年度には、東海大学医学部付属病院のリニューアルに伴い高度救命救急センターも新病院に移転し、 診療の一層の高度化と拡充を図りました。2022年度は教授2 名、准教授4 名、講師5 名、助教9 名、臨床助 手6 名の計24名の医師から構成され、救命救急専門医が臨床研修医とともに診療チームを構成し、幅広い救 急診療にあたっています。救命救急科は3 つの診療チームを編成し、救急搬送患者の初療に対応するととも に、単科の診療科では対応が困難な重症患者の入院治療を担当しています。さらに医師、看護師の他臨床実 習を行う学生や救急救命士が診療チームに参加しています。救急救命士にさまざまな病院実習(卒前実習、 就業前実習、再教育実習、気管挿管実習〔麻酔科〕、薬剤投与実習)を行うなど、教育にも力を入れています。
 また、湘南地区(人口約200万人)のメディカルコントロール協議会の中核病院として、高度救命救急セ ンター内にメディカルコントロール室を設置し、救急隊員が担っている病院前救急医療の質の向上に貢献し ています。常時、1 名の医師スタッフがメディカルコントロール担当医として従事し、救急救命士を含む救 急隊員が行なう医療行為(気管挿管、静脈路確保、薬剤投与、除細動等)に対する指示、指導・助言を行な っています。

ドクターヘリ

主な対象疾患

 当科は救命救急専門医以外に、各診療科の専門医による診療応需体制が整備されており、高度救命救急センターの対象となる、以下の重篤な病態を呈する重症患者への迅速な対応が可能になっています。
  • 心肺停止
  • 意識障害
  • ショック
  • 多発外傷
  • 重症熱傷
  • 急性中毒
  • 指肢切断
  • 脳血管障害
  • 虚血性心疾患
  • 不整脈
  • 呼吸不全
  • 急性腹症
  • 代謝性疾患
  • 急性一酸化炭素中毒
  • ガス壊疽 など
 スキンバンク、急性中毒診療検査室が設置されており、重症熱傷や急性中毒への診療能力は非常に優れています。急性中毒診療検査室は、薬毒物の定量分析を実施し中毒治療に貢献するとともに、新しい分析法を開発し中毒病態の解明を進めています。急性一酸化炭素中毒、ガス壊疽や潜水病等に対しては、5名同時収容の大型の高気圧酸素治療装置を使い、高気圧酸素治療を常時迅速に実施できる24時間診療システムが整備されており、県内だけでなく静岡県や埼玉県からも重症治療に利用いただいています。とくに、ダイビングのメッカである伊豆半島の東・南伊豆で発生した潜水病等の減圧障害に対応するため、ドクターヘリをも活用した緊急再圧治療システムを確立しています。

主な診療実績

 2020年4 月~2021年3 月までに、合計11,249人(救急車6,197人、ドクターヘリ167人、一・二次外来4,855人、 他院からの搬送等30人)の救急患者さんの対応にあたりました。救急車およびドクターヘリ、他院からの搬 送等で来院された患者のうち、入院治療が必要となった患者さんは4,893人と、わが国有数の施設と診療規 模を有する救命救急センターとして運営されています。

1)疾病別の重症患者数(2021年)

 2021年1 月~12月における疾患別の重症患者数を示します。病院外心停止 246人、重症急性冠症候群  166人、重症大動脈疾患 87人、重症脳血管障害 183人、重症外傷 566人、指肢切断(四肢もしくは指趾 の切断) 2 人、重症熱傷 40人、重症急性中毒 31人、重症消化管出血 103人、重症敗血症 176人、重症体温異常 39人、特殊感染症 17人、重症呼吸不全 133人、重症急性心不全 124人、重症出血性ショック 38人、重症意識障害 57人、重篤な肝不全 2 人、重篤な急性腎不全 24人、その他の重症病態(重症膵炎、内分泌クリ―ゼ、溶血性尿毒症性症候群等に対して持続動注療法、血漿交換や手術を実施した症例)215人でした。なお、上記疾患には熱射病、偶発性低体温症、窒息・溢頚、溺水、減圧障害等の重症患者が含まれます。

2)ドクターヘリにより搬送された疾患別の患者数(2020年度)

 2020年度( 4 月~ 3 月)にドクターヘリにより搬送された疾患別の患者数を示します。 総搬送患者数172人のうち、外傷等外因によるものが85人、疾病によるものが87人でした。 外傷等外因によるもののうち、外傷59人、中毒3 人、熱傷3 人、環境障害3 人、その他の外因2 人で、心肺停止は15人でした。疾病によるもののうち、脳神経系疾患14人、 循環器系疾患29人、呼吸器系疾患4 人、消化器系疾患8 人、代謝性疾患2 人、産婦人科疾患0 人、その他12人で、心肺停止は18人でした。

3)高度救命救急センター施設

○1階

*救急処置室、救急診察ブース〔6ブース〕、緊急手術室、スタッフステーション、家族控室、医師控室、救急隊員控室
*CT、MRI、血管撮影室、単純X線撮影室

○2階

*E-ICU(救急専用集中治療室)19床
*熱傷センター3床
*E-HCU(救急専用重症治療室)36床

ご挨拶

 「救急」と聞くと、非常に不安を感じる方も多いかと存じます。救急医療は地域医療における最後の砦であり、なくてはならない存在であります。 当科は、救急搬送される全ての患者さんの初期治療から、病棟(EICU、EHCU、熱傷センター)での診療を行っております。診療の結果、各科の専門治療が必要な場合には、各科の医師や他職種と連携して、チーム医療を行います。 我々は、特に現場の地域救急隊からの要請に対して「断らない救急」をスローガンに、24時間365日対応可能な体制を整えております。

高度救命救急センター所長
守田 誠司

救命救急科 診療科長
中川 儀英

医師一覧

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